出演団体推薦枠 投票結果
出演団体がお互いに作品を鑑賞し、全国学生演劇祭の出場権を与えるにふさわしい団体を選出するべく投票を行いました。
(受賞団体の幻灯劇場・劇団なかゆび、辞退した劇団速度・ソリューションにQは投票の対象から外れています。)
6票 劇団西一風
4票 スーパーマツモト2
3票 劇団べれゑ
1票 青月ごっこ
劇団西一風 推薦理由
・劇団未踏座
音響や照明変化をほとんど使わず、役者の技量や小道具等を独特に使い、観客をその世界観へ引き込んだ。作品自体に大きな笑いや祭りのような盛り上がりがあるわけではなく、一貫して静かに進み、シュールで小さく細かいところで笑いを誘うことで、うまく作品を作り上げていた。「ピントフ」というタイトルとチラシデザインから、とても壮大な芸術作品を想像していたが、蓋を開けてみるとピントフの正体は“霧吹き”であり(作品内で登場する会社では重要な商売道具なのだが)、シモハケから伸びる鉄製のベルトコンベアから流れる木箱に、社員が「ピントフ」で水を吹きかけるというただそれだけなのだが、その作品に出てくる登場人物がその世界観をしっかりと共有していてうまく観客にシュールさが伝わっていたと思う。もしも全国学生演劇祭に出る際には、その持ち前の独創性で勝負してほしい。
・雪のビ熱
作品は、ある工場内の風景から始まり、そこから場面が変わることはない。箱のようなものを淡々と生産していく場面が続けられるのみである。しかし、その中に笑いのポイントが幾つもあったのが面白かった。また、ピントフという不思議な名前にも興味を感ぜずにはいられなかった。その為、淡々と生産を繰り返すという行動を45分間行っているただそれだけだが、観客を世界観に引き込むことができていたように感じた。また、物語に出てくるそれぞれのキャラクターが確立されており、世界観をより一層確かなものにしていたように思う。全てのキャラクターが各々の役割を持っており、世界観を上手く回せているところが、見ていて飽きることなく45分間を楽しめた一つであるように思う。ある一つの絶妙な雰囲気を45分間保つことができた演出、それを支える演技が全国学生演劇祭にふさわしいと考えたため。
・劇団西一風
まず、この制度の推薦基準には「全国学生演劇祭の出場権を与えるにふさわしい団体」とあるが、私は全国学生演劇祭の出場意義を明確に理解できていないため、「今、質の高い作品を創る学生団体」に出場権を与えるべきと考え、一団体を選出するに至った。劇団西一風は作品づくりにおける、俳優 モノ 空間 言葉、に対する姿勢と、それらの構成が良かった。それぞれを作品で使用することに対して切実であり、それぞれが発動する必然性を強く感じた。観客との距離感を上手く見極められていたため、劇場一体として質の高い時間が流れていたと思う。作品の中身は、等質な会話や演技の連続によって構成されており、それらは瞬間的に消費されていく。だがそれらは消費されることを前提に配置されており、意味性と価値について批評性も感じられた。これらの理由から、私は劇団西一風を出演団体推薦枠として自薦する。
・幻灯劇場
「西一風」色、というものが、西一風には毎公演どこかあるように思ってきたが、今回はその色を払拭してまた新たな劇団色が出てきたように感じられた。私にとってそれは3年前から一ファンとしての嬉しさ半面、独自の視点の切り取り方に演劇人として悔しさすら感じられた。今回の舞台上は「不必要」なもので溢れていた。ピントフ、言わばただの霧吹きである、それらがベルトコンベアに流されて落ちるだけ、ただそれだけのことにここまで多くの観客が心を掴まれ、霧吹きが落ちる度に多くの笑いが起こる。そんなこと、最早狂気の沙汰ではないかと思った。しかし、私もその狂気に包まれていた。やはり悔しいばかりである。西一風にはそのような客を包む力がある。私は、その力をぜひ、全国でも見てみたい、そして観客に狂気に包まれてもらいたいと思った。
・劇団紫
どこかに存在しそうな単純労働の工場から話が始まり、段々とその工場の持つ独自の奇妙な世界を展開していき徐々に観客をシュールなピントフズの世界観に引きずり込んでいくのが良いと思った。笑う場所で笑いやすく、同じ内容で笑いを繰り返しとるけれど、それがしつこくないのも良かった。日常で存在する普通の出来事をピントフに置き換えるだけで面白くするセンスも良かった。どの役者も地味になり過ぎず、目立ち過ぎず、役者一人一人が魅せるべき場所でしっかりそのキャラクターの個性を出せていて、役者の良さ、配役の良さ、演出の良さを感じた。舞台美術や小道具は無駄なもの、不足していると思うものがなく、全てを有効利用していたのも良かった。特にベルトコンベアーは一番活用されていたと思う。脚本、演出、台本、役者、スタッフワーク、全てが揃っている団体だった。
・青月ごっこ
この団体を推薦するに至った、要因を2点挙げる。①今回の京都学生演劇祭の会議段階で「演劇を今まで見たことない人に見てほしい」また、「演劇の『祭』であるので、祭感を出したい」ということを伺っておりました。演劇に関わると「学生演劇」や「小劇場」という言うだけで、劇場へ向かうことに躊躇う方も少なくはないと痛感する。が、それらの負のイメージの払拭に相応しいく、観劇するのは楽しいものだと感じられた作品であった。そして、なによりも演劇の『祭』らしい作品でもあった。②物語に万人に受け入れるものは存在しないと考える。なぜなら物語は、それを見る個人の好みが、どうしても付きまとうからである。なので、この推薦は私自身の好みであるのかもしれない。何も考えられず楽しめた作品の1つであったので、いろんな人に見てほしいと素直にそう感じた作品であった。
スーパーマツモト2 推薦理由
・遊自由不断、
「泣けるモラル」。冒頭から、あぁこれは恐ろしい作品だなぁ…と。物語のパーツが壊れていること、そしてその破壊を孕んだ要素が集合して、分散して作られている45分間だという印象を受けました。ストーリーが分かりやすく提示されているようなものではありませんでしたが、目の前で繰り広げられることから目を離させない何かを感じました。決して温かくない。冷たくもない。ただの破壊。目を背けたくなるような何かが提示されても、なぜだか目を離せず見届けてしまう。この作品は僕にはとても魅力的に見えました。他の団体と比較して語れるものでもないのですが。自叙伝のようなこの作品が持つ「攻撃性」と「笑い」の融合、こういったものが全国でも見てみたい。推薦理由は以上です。
・ソリューションにQ
全国学生演劇祭に推薦するにあたり、いくつかの団体で最後まで迷いました。その中でもスーマツ2には、最も「全国で何をやるんだろう、どうなっちゃうんだろう」という、好奇心転じて期待感、危機感転じて高揚感を覚えることができました。僕は期待屋なので、同じような完成度では退屈します。全国ではさらに違う、全国だからこそ変わってしまえる作品を僕は全国に望みます。さらに、誤解を恐れずに言うと、僕は作・演出の、すっ太郎という人を個人的に知っています。この人は、どうやら全国を見据えて京都学生演劇祭出場作品作りをしていたらしい節があります。しかし気持ちだけでなく力もあります。そこでどうなるかはわかりませんが「やってしまえ」と思います。そういう、人と時代や場所が交錯して生まれるドラマとある種の不安定性、ヒリヒリした感覚が全国 に欲しくなってしまいました。以上の理由から、ソリューションにQはスーパーマツモト2を推薦します。
・劇団速度
劇団速度はスーパーマツモト2に投票します。泣けるモラルを見たときに、思ったのは、作者(この場合すっ太郎)の影が、ここまで作品に透けて見えるのも珍しいのではないかということでした。みはじめてからしばらくは、脈絡のないコラージュ作品、それも借り物の演出と借り物のテキストを組み合わせたようなシーンのコラージュ作品のようにみていました。実際に、それはそうだと今でも思っていますが、作者の存在感は凄かったです。個人的に付き合いがあるとか、そういうことなのかもしれませんが、すっ太郎という人物を見せつけられているようでした。内容は決して良いものであったとは言えませんが、作者の影を色濃く見せつけられてなお、最後まで見ることのできる貴重な作品だと思っています。再び同じような路線をいくのか、あるいは転換するのか、とても気になります。ぜひ、もう一度見てみたいと思いましたので、スーパーマツモト2を推薦したいと思います。
・スーパーマツモト2
全国に推す団体を決める上で一番大事だと思ったのはノースホールでの再演(京都でのフィードバックを受けて再創造されたもの)が観たいかどうかということです。再演性。これは今回じゃなくても、僕が演劇や映画に強く求めるものです。再演に耐え得る作品か。観客がまた観たいか。作者がまた上演したいか。つまり、上演のたびに新しい発見などの生産が期待できるかということです。例えば細田守の映画は一回観たら大体分かるので全然再演性が無いと思ってます。ロームシアターのノースホール、吉田寮食堂とは比べ物にならないくらい大きく、さらには拡張高い劇場の地下二階。完全に外界の気配を遮断できるホールです。今度は客席の後の方からでも地面が見えるでしょう。そうしたことを考えた時にもう一度観てみたいと思えるのは「練度の上がった『炬燵』」か「散らかり過ぎてない『泣けるモラル』」です。『ピントフズ』はノースホールでの再演はあんまりだと思いますが、作者の作家性を考えると新作(もしくは思い切った再創造)にかなり期待できます。
劇団べれゑ 推薦理由
・劇団なかゆび
劇団べれゑを推薦する理由について述べる。同劇団の上演は持ちうるものすべてを導入しようという気概とそれを可能にする実力を示すものであった。超過はあったものの15分という転換時間の中で、吉田寮食堂を自劇団の色に完全に塗り替える技術は高く評価せざるを得ない。劇場を自劇団の色に塗り替えることは、現代の演劇にとって最も重要な技術である。多くの劇場はあらゆる上演に対応するため、無個性なものになっている。だから こそ、この技術はあらゆる劇団に必要とされるものである。だが、学生劇団限らず多くの劇団にはその技術がない。劇場が劇場のまま上演されるという現状を打破するには同劇団のような実力、技術ある劇団が必要である。劇団べれゑはその点において、秀でている。他劇団にはない舞台裁きで京都学生演劇祭2016での上演をやり遂げた。この団体を是非全国に紹介するべきである。以上の理由から劇団べれゑを推薦した。
・劇団べれゑ
推薦のための観点として「全国学生演劇祭に出場するにふさわしい」ことを、演劇祭を盛り上げる作品の出品・地方地域の演劇ネットワークの充実という点に着目したい。この観点の上で京都学生演劇祭に出場した団体中(受賞、推薦枠辞退の4団体を除く)、推薦したいと思う団体は劇団べれゑだった。『炬燵』という着眼点とそのモチーフから物語を展開していく脚本の面白さ、俳優・舞台装置・美術・音楽が一体となって舞台を作り上げていく総合芸術としての作品の強度、これらは評価に値すると考える。観客や審査員からの反応は当団体の公演が演劇祭を盛り上げていたことを裏付ける。転換でのスタッフワーク、美術・衣装をしっかり作り上げるところからはフィクションを具現化させる演劇創作の力、生演奏による音のアプローチなど随所に劇団としての魅力を作品として発揮できていた。作品中でまだ消化できていなかった演出プランやギミック・演技の昇華に期待して全国学生演劇祭出場に自推する。
・劇団月光斜TeamBKC
今回劇団べれゑさんを出演団体推薦枠として推薦する理由は、一つに演劇が総合芸術であるという観点から、演出方法や俳優の技量から主だって判断するのではなくその他すべての要素からも同等に鑑み、その総合的な作品としてのポイントを比較した際に優れていると考えられることにあり、もう一つには、約半年の期間を経てもう一度同じ作品が別の会場で上演されることを考えた際、もう一度見たいと思うか、またその作品がさらに変化する可能性を持っているかを考えた際に、『炬燵』が最もその要点に当てはまっているのではないかと考えられるからです。総合的な作品としてのポイントに関しては、舞台転換の15分間をフルに使って舞台装置を設置し、また音響照明映像の使い方にも工夫が凝らされており、45分の作品の中に詰められたエネルギーが他の作品と比較してより多様な形で感じることができました。また、もう一度上演される作品として考えた際、特に舞台装置や映像の面で更なる飛躍があるのではないかと考えられ、それが結果として演出方法にも影響を与え、さらに刺激を与えてくれる作品になるのではないだろうかと感じられました。以上の点より、劇団べれゑさんの『炬燵』を出演団体推薦枠に推薦させていただきます。
青月ごっこ 推薦理由
・劇団月光斜
完成度・役者の技量共に一定以上のレベルにあり、伝えたいことが明確で分かりやすく、見ていて退屈しない工夫や面白さ、熱量を感じました。観ていて心地よいテンポも、好印象で残っています。何も考えずに見ることも深く考えて見ることもできる作品だったと思います。また、発達障害というデリケートなテーマに対して真摯に向き合っていることが伝わってくるような、それをこの場で伝えたいという必死さが印象に残っています。実際に障害を持っている方の視点が丁寧に描かれていました。そのため、観ている側も同情ではなく真剣に観る事ができたと思います。派手な芝居ではなかったものの、しっかりしたテーマと伝えたいことがあり、京都学生演劇祭という場所に合っているある意味でとても学生演劇らしい作品だったように思いました。以上の理由から、劇団月光斜は青月ごっこを推薦致します。
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